第119回 「東京の大学定員増禁止措置が首都圏家庭にとって意味すること」
みなさん!こんにちは!!東京の大学定員増を原則10年間認めないとする政府関連法案が成立しそうであるとの報道がありました。若者の東京一極集中の是正に向けた取り組みの一環です。効果がどれほど期待できるかは依然分析した通り未知数ですが、少なくとも首都圏私立大学志願者にとっては厳しい側面の方が圧倒的に多そうです。記事は教育改革2020からです。
⇒首都圏大規模私大への2度目の締め付け
この話、ここにいたるまでの経緯を押さえる必要があります。
「地方創生のための大都市圏への学生集中是正方策(長い!)」に関しては、第一弾として、平成26年末に、①学部新設基準の厳格化、②定員管理の厳格化が閣議決定・実施されました。特に②は、超過入学者数に応じて、国立大学は教育費相当額を国庫返納、私立大学は学生経費相当額を減額、と相当厳しい措置が取られており、事実上の大都市圏にある大規模私立大学への締め付けを意味していました。
これにより、2017年度大学入試では首都圏の大規模私立大学の多くが合格者を絞り込み、早稲田大学や法政大学では一般入試の合格者が前年度より2,000人近く少なくなりました。
当然、合格難易度も上昇したと言われています。
こうした国の動きに対し、私立大学側も手をこまねいてはいません。収容定員を増やすことで対抗を図りました。2018年度は明治大学の1,000人を超える定員増をはじめ、大型増員が相次いでいます。この私立大学が苦難のうえ繰り出した「抜け道」に、しっかりと蓋をするための国のさらなる一手が、本日報道された定員増禁止措置というわけです。
⇒そもそも減っている一般入試枠
この動きとは別に、もうひとつ押さえておきたい流れがあります。そうです、このブログのテーマである2020年教育改革です。先日、高大連携の未来予想図という記事にも書きましたが、大学入試入学者における「AO入試」「推薦入試」の割合は年々増え続けています。私立大学全体では、2017年度ではなんと51.2%。すでに半数を超えています。
「29年度「推薦・AO」入学者、 過去最高の“44.3%”!」旺文社教育情報センターより
大学入試改革では「点数絶対主義にとらわれない選抜方法の多様化や評価尺度の多元化」がうたわれていますので、今後もこのトレンドは変わることはないでしょう。
⇒トップ私大がねらう「関東ローカル大学」からの脱却
さらに、注目したいのが、早稲田大学や慶應義塾大学といった私立トップ大学が、このAO・推薦入試を活用して学生の多様性の確保を狙っているという点です。両大学は現在、約4人に3人が首都圏の高校出身者と言われており、地域的な多様性は失われつつあります。関東ローカル大学などと揶揄されている所以です。
大学にとって多様性のなさは競争力の低下につながります。実際、世界大学ランキングで年々順位を下げている両大学にとって、ダイバーシティが機能不全を起こしていることに対する危機感は並々ではないでしょう。
「THE世界大学ランキング2018、東大過去最低46位…SGUの順位推移」リセマムより
首都圏以外の学生に向けた奨学金を充実させるとともに、早稲田大学はすべての都道府県からの受け入れを目標とした「新思考入試(地域連携型)」を、慶應義塾大学は法学部で全国を7つの地域ブロックに分けて選考を行う「FIT(AO)入試【B方式】」を実施し、地方の優秀な学生の取り込みに必死です。こちらも、長期的なトレンドとして拡大することはあっても反転することはないと考えるのが妥当でしょう。
⇒少子高齢化によって首都圏の受験者数は減るのか
大学定員増が抑制され、一般入試枠が減り、地方の学生有利に働くシステムになったとしても、日本は少子高齢化のまっただなか。生徒の数が減っていくんだからいいんじゃん?と思いませんか? 僕は思いました。ということで、今後「首都圏の」子どもの数がどれだけ減るんだろうと調べてみました。
その結果、出てきた結果が、ジャーン、こちら。
うーん、、、少なくとも今の小学校2年生(上記の図では現小1【新小2】)までは、1都3県では横ばい。東京都にいたってはわずかですが増加傾向にありますね。つまり、事実上、小さくなっていくであろう首都圏の枠を同じくらいの人数で争う。競争は厳しくなると見通しがもてます。つらい。もちろん、過熱傾向になる首都圏での競争を厭って地方の大学や海外の大学への進学を目指す人もいるでしょうが、、、まあそこは急に大きく変化はしないだろうと勝手に可能性を捨ててみます。
⇒今後の首都圏入試への影響は
というわけで、長々と書き連ねてきましたが、一般入試枠を狙う首都圏受験生は今後厳しい戦いになりそうだぜ、チャンチャン。
、、、だけでは終わらないよ? これくらいの推論はきっとみんなするだろうし、なんとか回避しようと動くでしょうね。で、どうなるか。首都圏中学入試・高校入試における付属校の難化となって表れるんじゃないかと想像します。
そもそも、ただでさえ、高校生の基礎学力定着を目指すための「高校生のための学びの基礎診断(仮称)」だとか、現行の大学入試センター試験に替わる「大学入学共通テスト(仮称)」だとか、よくわかんない不確定要素が多すぎてこれからどうなるか超不透明だからね! 不安に打ち震えるくらいなら手堅く内部進学で早く進路を確定させたいと思うでしょうね。というか、その傾向は表われはじめているよね、すでに。
この春、中学入試や高校入試の入試報告会が楽しみです。