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第128回 「合格浪人」に「選択的浪人」、大学全入時代の浪人生最新事情

みなさん!こんにちは!!毎年4月から晴れて大学生というピカピカの1年生がいる一方、残念ながら不合格で「浪人」した人もいるはず。いや、昨今は浪人も多様化し、国立大学などに合格したのに浪人する「合格浪人」や、受かった大学に籍を置きながら次年度の入試に備える「仮面浪人」、志望校のランクアップのための「選択的浪人」などもいます。大学全入時代ならではの“いまどきの浪人”最新事情を取材しました。
記事はダイヤモンドからです。

⇒いまどきの浪人は医学部を筆頭に理系が中心
いまや「大学全入時代」。大学の入学希望者数より大学の入学定員数の方が多いため、選り好みさえしなければ誰もがどこかの大学には入れるという状況なのだが、この時代の浪人事情とはどんなものなのか。
18歳人口が戦後最大となったのは、団塊の世代が18歳を迎えた1966年。それに次いで多かったのが、そのジュニア世代による1992年だった。この年はなんと3人に1人が浪人生だった。志望校に入るのは、本当に難しい時代だった。ところがその後、徐々に浪人数は減っていき、2011年は7人に1人が浪人生という水準にまで変化している。
2016年度の文部科学省の学校基本調査によると、直近では浪人生は5人に1人程度となっており、やや“盛り返している”印象だが、それにしても浪人が多いとは言い難い。
浪人の数もさることながら、“質”には明らかな変化がある。

医学部受験

大手予備校の駿台、代々木ゼミナール、河合塾によると、いずれも浪人は理系が中心。特に医学部の受験生が代表例だ。「無理してでも勉強して医者になれば、リターンが相応に見込める」というのがその理由だ。医学部以外でも、国立大学の理系は私大に比べて学費が安く、設備が充実しており、学生に対する教員の比率が優勢なので浪人してでも入りたいという学生が集まりやすい。また、理系の入学試験は学力テストがあることが基本なので「適当に勉強して入学する」という事態が発生しにくいこともあり、自ずと浪人は理系が中心になってくるのだ。
しかし、そうは言っても1年以上浪人する「多浪」は珍しく、あくまで「1年まで」が主流のようだ。これは、前出の統計に加え、文科省の入試対応を見ても明らかだ。2015年度の入試は「脱ゆとり教育」の最初の世代が参加した年だったため、この時のセンター試験の数学・理科は新旧の学習指導要領に対応する問題が2通り用意されていた。しかしこの経過措置は1年だけ。つまり、「文科省も浪人生はあまりいないと認識しているのではないか」と考えられる。
浪人数の減少は、「親がそれを勧めない」という背景もある。
ひとつは経済事情だ。大手予備校の受講料は年間100万円程度かかり、“浪人費用”は家計を圧迫する。
それだけでなく、浪人へのマイナスイメージもある。今の高校生の親世代である40代前半(中心は42、43歳)は団塊ジュニアで、前述のように3人に1人が浪人生だった世代。自らが浪人を経験している人が多いため、その辛い体験が頭をよぎり、子どもには苦労させたくないと「受かった大学に行きなさい」と説得するケースが目立つそうだ。
しかし、一概に「浪人は避けるべき」とも言えないことを親たちは知っているだろうか。むしろ、この全入時代にあえて浪人することで、より良い進学を果たすことができるケースもある。

⇒国立に籍を置きながら受験勉強する仮面浪人
受かった大学に籍を置きながら、次年度の入試を受けようとする「仮面浪人」は昔もあったが、その多くは難関国立大学を目指すため、滑り止めで受けた私大に通うというものだった。
ところが最近は、国立大学にも仮面浪人が存在する。有名どころだと、大阪大学は後期試験の合格枠が多かったため、格好の“仮面の巣”になってしまっていた(現在は後期を廃止)。今は北海道大学や九州大学が人気を集めているが、いずれも難関10大学ながら、ここに在籍し東大や京大を目指す仮面浪人生が入学している。
もともと仮面浪人をするつもりがなくても、「入学したら雰囲気が合わなかった」「やっぱり第一志望校に行きたい」という気持ちが5月の連休頃に高まり、通っている大学を辞めずに予備校に入学を希望する「合格浪人」や、志望校のランクアップのための「選択的浪人」が後を絶たない。
確かに志望校合格のチャンスは、昔と大きく異なる。最近ではAO入試のほか、私学のセンター試験利用試験や同じ大学内の学部統一試験、国立の後期試験など、受験の機会が圧倒的に増えているため真っ当に浪人をすれば希望の大学に進学しやすくなっているのだ。

文学

⇒「スーパー先生」より「親しみある先生」予備校に求めるものも変化した
浪人事情の多様化や少子化に伴い、予備校の役割も変わってきた。
昔の予備校は教え方がうまい「スーパー先生」を揃え、「良い教科書」を用意することが大前提だった。しかし、全入時代では「なんでも身近に相談できる存在」であることが求められている。
生徒も親も学校の先生以上に進学相談ができる存在として予備校を頼りにしている。
例えば浪人中の生徒の大半は、「対面授業を好んで受けたがる」(河合塾 進学教育事業本部担当部長・中村浩二氏)という。現役生の場合は部活と学業を両立するため、限られた時間を有効活用すべく、自分の都合に合わせて動画授業を受けたり、スマホで授業を視聴するアプリを使う生徒が多いというが、動画授業は聴き流し、見流ししやすく要点が頭に残りにくいため、受験勉強においては実は難度が高い。そのため、受験勉強一本に的を絞れる浪人の場合は、講師による説明のライブ感と教室の一体感、授業中や休み時間に疑問を質問できる対面形式に魅力を感じる生徒が多いという。
また、親たちは子どもの教育に「まったく関与しない」か「積極的に介入する」のどちらかだが、後者の場合は予備校に大きな期待を寄せる傾向が高く、「親の介入はここ4~5年で顕著になった印象」だそうだ。
少子化によって浪人生の減少は今後も続くだろうが、かつての浪人事情や予備校の常識が現在は変わっているように「当たり前だったこと」の変化は著しい。子どもの世話を焼きたい親たちは昔の体験を元にして取り残されないよう、現代の進学事情にアンテナを張っておこう。万が一浪人することになっても「環境を有効活用できる」と前向きに捉えていきたい。

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