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第127回 「どうする・どうなる!?2020年。保護者視点で分析する教育改革。PartⅧ」

みなさん!こんにちは!! 過去2度にわたり、大学入学共通テスト(新テスト)が年複数回実施になった場合の影響について考えてきました。
大学入学共通テスト(新テスト)が年複数回化?【前編】 – 教育改革2020
大学入学共通テスト(新テスト)が年複数回化?【後編】 – 教育改革2020
もともとのきっかけは、安倍首相の「高校から大学に行くときに1回の試験だけで全てが決まるというのは、ほかの先進国ではほぼ例がない」という発言でした。
「あらら、韓国では毎年、大学修学能力試験(スヌン)の日に、公共交通機関を増便したり、消防署に救急車、パトカーまでフル活用して受験生の緊急移送をしたりのお祭り騒ぎをしてませんでしたっけ?テレビでよく見るよね?」と訝しく思ったのですが、例をひとつしか知らないで語るのも不誠実なので、他国の状況を調べてみたいと思いました。記事は教育改革2020からです。

先進国の大学入試(共通試験)事情

⇒先進各国の大学入試(共通試験)状況
いきなり結論からいきます。
先進各国の共通試験の試験回数は以下のようになっています。

グラフ

『大学入試改革』p143 「各国の大学入試」の表をもとに作成

( ゚д゚) ・・・
 
(つд⊂)ゴシゴシ
 
(;゚д゚) ・・・
 
(つд⊂)ゴシゴシゴシ
  _, ._
(;゚ Д゚) …!?
むしろ、ほとんどの国が1回じゃない…!?

これはいったいどういうことなんでしょうか。
安倍首相が適当なことを言っているのか、共通試験ではない何か他の試験を引き合いに出しているのか、それとも、本を書いた読売新聞教育部が間違っているのか…。ひとつしかないはずの真実を突き止めるには僕では力不足です。コナン君の登場が待たれます。
ともあれ、実際に複数回実施している国・地域もあります。アメリカと台湾です。それぞれの国について、共通試験の回数に関する最新の動向を、先の『大学入試改革』の中からピックアップしてご紹介していきたいと思います。せっかくなので。

⇒高等教育先進国 アメリカ
競争力のある高等教育が世界から注目されているアメリカ。当然、その入学者選抜方法についても世界中の教育関係者が意識していることでしょう。日本も例外でなく、大学入試改革の議論にあっては常に参考にしてきたものと思われます。
そのアメリカで最も有名な共通試験と言えばSAT。近年はもうひとつの共通試験であるACTを採用する大学が急増しているそうですが、それでもなおSATの影響力は小さくないものと考えます。
SATは年7回もの受験が可能。受験者は最も良い成績を大学の出願に使うことができます。
まさにこのことこそが、今、アメリカの大学入試で問題視されている点です。訓練すれば効率的に解ける問題であることから、中国、韓国、インドなどアジア系の富裕層を中心に、高得点に必要なテクニックを学ばせようとSAT対策塾に殺到し、複数回受験ののちに実際に高得点を得ているのです。
過熱化する受験対策と、「得点が家庭の年収に比例している」という批判から、SAT運営団体側も2016年に試験内容を一新。塾通いや家庭教師の有無によってテスト結果が左右されにくいものへと改変し、格差是正の姿勢を明らかにしています。
さらには、大学側も動き出しています。2016年2月、ハーバード大など全米80以上の入試責任者らが共同で、受験競争の過熱を抑え、低所得家庭の子どもの高等教育を受ける機会を広げようと「学生選考の改革」を提言しました。
「現行の大学の選抜制度は、他者への貢献や公共の利益よりも個人の成功が大事だというメッセージを若者たちに送っている」と問題提起し、全米の大学に対し、受験生に共通テストを複数回受験しないよう促すことを求めています。
アメリカ高等教育の高い競争力を下支えしているのは「多様性」です。異なる出身地から様々な経験、才能を持った学生を集めた方が、多様な価値観や考えが生まれます。同じタイプの学生ばかり集まることがないよう、国を挙げて格差是正に取り組む様は、自らの強みの源泉を知り尽くしていること、そして、それを「良識」や「理念」として昇華させている姿として目に映ります。

積み上げられた参考書

⇒高い実行力で時代にあった入試スタイルを模索する 台湾
共通試験を複数回実施しているもうひとつの国(地域)、台湾。こちらの事情はアメリカとはまた少し違います。
9月に新年度がはじまる台湾では、1月に「学科能力測験」という高校2年生範囲までの基礎学力を判定するための共通試験が、そして高校卒業後の7月には「指定科目考試」という高校全課程を出題範囲とした応用的な共通試験があります。
大半の学生が1月の「学科能力測験」を受験し、その結果をもとに、日本で言うとことの「AO入試」や「推薦入試」に臨みます。そして、残念ながら合格にいたらなかった学生が7月の「指定科目考試」を受験し「一般入試」へと望みを託します。
早く進学先を決めたいという思いから、多くの学生が1月の試験で入学を決め、7月は敗者復活戦という趣が強くなっていることが特徴です。
試験の範囲や目的の違う2つの共通試験が共存する台湾。チャンスが2回あることを歓迎する受験生がいる一方で、生徒を送り出す高校からは不満の声があがっているようです。
1つ目の課題は、高校3年生後半の授業が成り立ちづらくなっている点です。全体の約半数が1月の試験で一足先に合格を決め遊んでしまう一方で、もう半数が7月の試験に向けて準備をしている、という、教室の中が二分された状態では、安定したクラス運営ができないのも無理はありません。
そしてもうひとつは、1つ目と地続きにある課題でもあるのですが、1月の試験の出題範囲は高校2年生までの範囲に限られるため、この試験で合格を決めた生徒たちは高校3年生の勉強をしなくなってしまうという点です。大学で必要となる重要な内容の多くは高校3年生の履修範囲に入っています。ここでの学びが薄くなってしまうことが、大学生の学力低下につながっていると考えられているのです。

⇒一度は見送られていた年複数回実施プラン
突然ふってわいたように見える今回の共通試験年複数回実施プランですが、実は過去に1度、文科省の審議会「高大接続システム改革会議」で議論されたことがあります。
その際には、高校側に受験準備期間の前倒しで校内行事に影響が出るなどと不安視する声が出たため「引き続き検討する」との表現にとどめ、事実上の先送りとなりました。2016年のことです。
高大接続システム改革会議(第13回)配布資料3 「最終報告(案)」

2016年と言えば、安倍首相がすでに総理として在職していた時期にあたります。審議会に諮り、いったん議論を尽くし答申が出た内容について、大きく社会状況や世界の潮流が変わっていないにも関わらず、わずか2年で(実質的に)再度諮問するというのは正直いかがなものだろうと思います。

まとめ
「高校から大学に行くときに1回の試験だけで全てが決まるというのは、ほかの先進国ではほぼ例がない」という首相・文科相発言に端を発した今回の大学入学共通テスト(新テスト)年複数回実施プラン。
ふたを開けて見ると、多くの先進国でも同じように年1回実施となっているばかりか、複数回実施をしている国でも、受験生への公平性や高校教育への影響等の面から、少なからず反対の声が上がっていることがわかりました。
また、2年前の審議会でもすでに検討済みであり、なぜ今またこのテーマがゾンビのように再燃してきたのかちょっと理解に苦しみます。いずれにしても、ファクトの面からして???の多い案件なので、素人にもわかるような丁寧な議論が進むことを願っています。

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