第82回 「受験シーズン本番直前の考察 Ⅴ」
皆さん!こんにちは!!これまでも何度も振り返っている様に2018年の大学入試、特に私大入試はとても厳しかったようです。 「ええっ、あそこも落ちたー」「スベリ止めで受けたのに、ことごとく不合格になった」と言う声を今年ほど聞いたことはありませんでした。
人口減少と少子化で入試は楽になると言われてきたのに・・・。
調べてみると、「2018年私大入試戦線異状アリ!」でした。その主な原因は、志願者数の増大と有名私大がそろって合格者数を絞り込んだことでした。これまでも何度も考察したところではありますが、復習の意味を込めて、来年(2019年)の入試戦線を予想してみます。
⇒日東駒専はもはや滑り止めでは無い
《2018年私大入試戦線》
昨年(2017年)の入試が終わったあたりから、「来年(2018年)の入試、特に私大は難化していく」と盛んに指摘(予想)されていました。
そして、それが見事に的中する事態に。
模擬試験の判定はA(合格確実)で、赤本(過去の入試問題集)でも合格最低点をクリアした受験生でも、軒並み不合格になるケースをあちこちで見かけました。
テレビCMで有名な進学塾の講師も「合格最低ラインが10%から15%上がった感じがする。親の世代はいまだに、日東駒専を滑り止めの大学だと思っていますが、もう時代は変わりました」と厳しかった2018年私大入試戦線を振り返っています。
A大学が第一志望なら、B大とC大を滑り止めに受けて・・・。このような従来の図式が成り立たなかったのが2018年私大入試戦線でした。
⇒入試の多様化で志願者数が増加
私大が難化した理由の1つは、志願者数の増加です。
昨年(2017年)の私大入試の志願者数は前年度比で約8%増でしたが、2018年はさらに7%の増となっています。ちなみに、志願者数のトップは5年連続で近畿大で、2018年は15万人を超えています。
でも、人口減少と少子化が同時並行で進んで、18歳人口は減っているのに、なぜ、志願者数が増え続けているのでしょうか?
それは、大学入試が多様化したことによって、受験生の併願数が増えているからです。
例えば、東京の大学が日程をずらして、東京と地方とで入試を行うことは従来から一部で取り入れられていましたが、それが近年ではごく一般的となっています。
また、私大のセンター試験を利用した入試が人気で、志願者は前年比で10%ほど増えています。さらに、1つの大学で複数の学部・学科を受験することが可能となる環境を整えているところも多く、私大だけで10を超える受験をする受験生も珍しくありませんでした。
↓私大の志願者数・合格者数・倍率一覧(「AERA2018年4月23日号より引用)
⇒国の「私大定員厳格化」―合格者を減らす
私大が難化した理由のもう1つは、国の「私大定員厳格化」の影響です。
これは、大学教育の質の向上などを目的に、国(文部科学省)は私大の入学定員超過に対して、私学助成金の交付をカットするという措置のことです。
2015年までは総定員8千人以上のマンモス大学は、入学定員充足率(国に届け出た入学定員に対する実際の入学者の割合)が1.2倍までに抑えられていれば、私学助成金は満額が交付されていました。
ところが、この基準が2016年度は1.17倍、2017年度は1.14倍、2018年は1.10倍と年々厳しくなっており、基準が達成されないとペナルティーとして助成金が全額カットされることになりました。
さらに、受験生にとって悲報ともいえるのは、基準が0.95~1.0倍に抑えられたら、助成金は一定の額が上乗せされて交付されるのです!
私学助成金は、私大の収入の10%を占めているのが通常です。これが全額カットされるとなると、もはや大学経営は成り立たなくなります。
大学としては、これまでは、定員より多めに合格者を出して入学者を確保してきましたが、万一それで入学定員をオーバーしてしまったら大変な事態に陥ります。国の定めた基準を0.01でも超えないように合格者を絞り込む状況となっているわけです。
⇒駒澤大学が丸々消滅したのと同じことが……
実際のところ、私学の最高峰とされる早慶上智では、前年に比べての合格者数は3,092人の減、続くMARCH(明治・青山学院・立教・中央・法政)は8,094人の減、関西の雄・関関同立(関西学院・関西・同志社・立命館)も8,603の減となっています。
MARCHや関関同立の8千人超の減ということは、駒澤大全体の合格者数が8,300人ですから、1つの大学の1学年がまるまるなくなったということになります。
ちなみに、この「定員厳格化」措置は、安倍内閣の「地方創生」政策の一環といわれています。東京・名古屋・大阪の三大都市圏に学生が集中するのを抑え、地方へ振り分ける狙いがあるとされています。
《2019年の私大入試を予想する》
志願者数は増大しているにもかかわらず、合格者数は絞り込む――こうした傾向は、国の「定員厳格化」措置が変更されない限り、続いていくものと思われます。
さらに、2020年からは現在のセンター試験が廃止され、「大学入学共通テスト(仮称)」が導入されます。
この「共通テスト」は、これまでのマークシート型の試験に加えて、記述式の問題が出題されます。英語も段階的に「英検」や「TOEIC」などの外部試験に移行されるなど、大きな入試改革が実行されることとなります。
そうなると、2019年は現行入試制度の最後の年。予測が立てられない新制度での受験を嫌って、つまり「もう浪人はできない」となって、受験生1人あたりの受験大学・学部・
学科の数は増え、それが全体の志願者数を押し上げることは容易に予想できます。もちろん、合格者数は絞り込まれたままです。
2018年は前年に比べ、早慶上智やMARCH、関関同立といった人気大学がワンランク上昇すると同時に、それらの「滑り止め」とされてきた大学もワンランク上昇しました。
2019年は、先ほど述べた予想に基づけば、さらに全体的にランクが上昇していくのではないかと考えられます。