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第99回 「GMARCH大研究 ④」

皆さん!こんにちは!!志望校の決定もいよいよ最終コーナーに差し掛かっているのではないでしょうか。当ブログでは第86回から第90回まで日東駒専大研究をお送りしましたが、前回に引き続き、GMARCHを特集します。今年度入試で、早慶上智並みの難易度に達したと言われるGMARCH各校は最早私立最難関大学群と位置付けて良いと思います。志望校決定のお役に立てる情報をまとめて参ります!!記事は読売オンラインからです。

大学受験「とりあえずMARCH」の落とし穴

 多くの私立大学で出願の受け付けが始まる年明けに向け、「どの大学へ進学するか」「学部はどこにしようか」と受験先の絞り込みに悩む受験生やその保護者もいるだろう。入試難易度である偏差値を目安に、「早慶上理」「MARCH」「日東駒専」などと分類されることも多い私立大学。大学改革や学部新設が相次ぐ中で、大学・学部選びはどのようにしたらいいだろうか。大学進学アドバイザーの倉部史記氏に解説してもらった。

⇒「MARCH」という指標

図書館

 「本校は○割以上の生徒が、現役でMARCH以上の大学に合格します」
 「MARCHクラス以上への合格者数が、昨年に比べて○○%アップと大躍進!」

 まるで予備校のポスターかと思われるうたい文句を、高校のウェブサイトでもしばしば見かける。少子化が進む昨今、高校も生徒募集に力を入れている。その際に大きなPR要素となるのが、国公立大学や難関私立大学などへの合格実績というわけだ。

 我が子の将来を考える保護者にとって、高校の大学進学実績は確かに気になるところだろう。「国公立大」「早慶上理」「医歯薬系」など、高校は様々な大学群をひとくくりにして、生徒の入試合格実績をPRする。「MARCH」もその一つだ。

 ご存じの方も多いと思うが、MARCH(マーチ)は、明治(M)、青山学院(A)、立教(R)、中央(C)、法政(H)の頭文字を並べて総称するフレーズである。
 いずれも東京にキャンパスがあり、歴史が長く、ブランド力の高い私立総合大学だ。全国的な知名度もあり、入試難易度では、首都圏において、早稲田・慶応などに次ぐ難関大学グループとされている。

 同じく伝統校である学習院(G)を含め、「GMARCH」と呼ばれるケースも増えている。進学実績をアピールしたい高校にとって、「MARCH」合格は、難関大学へ生徒を送り出したと認められるための、分かりやすい指標の一つとなっている。

 この5大学は、経済界を中心に、政治、行政、メディア、芸能、スポーツなど、様々な分野へ人材を輩出してきた。卒業生の活躍が、各大学のブランドをさらに強固なものにしてきた。5大学を合わせた学生数はおよそ12万人と、かなりのボリュームを占める。今後も社会の中で一定の存在感を発揮することは間違いないだろう。

⇒「MARCH」ゆえの悩み

 「MARCH」というフレーズはもともと、受験産業によって作られた呼称だ。当初は受験生がイメージしやすいよう、入試難易度を示す偏差値が近い大学群をまとめ、面白おかしくキャッチフレーズとして表現した言葉に過ぎなかった。

 それがすっかり定着してしまい、最近では「とりあえずMARCHのどこかに合格できれば……」などと言い、5大学を一くくりに扱う受験生や保護者もいる。

 だが、この5大学の校風は必ずしも似ているわけではない。各大学にとっては、このくくられ方が悩みにもなっている。建学の精神や教育ミッションも違うし、グローバル化に向けた大学の方針にも個性がある。学部構成は重なる部分も多いが、ほかにないユニークな学部を持つ大学もある。たとえ、学部名が同じでも中味は「別物」の場合もある。
 そもそも、この5大学が公式に「MARCH」というグループを組織しているわけでもない。戦前から続く「東京六大学」は、東京六大学野球連盟という公式のつながりが存在するが、「MARCH」にはそのようなものはない。

⇒とりあえずMARCH?

 この5大学の中には、「ほかの大学と一緒にしないでほしい。ウチにはウチの特色があるのに……」とこぼす教職員も少なくない。

 MARCHの5大学は、早慶を目指す受験生の滑り止め的に位置づけられることもある一方、都内の有名大学に入りたいという受験生にとっては第1志望となりうる存在だ。ある意味、「難易度が同じくらいなら、中身も似たようなもの」という、偏差値偏重型の進路指導・進路選択の影響を最も強く受けている大学とも言えるだろう。

 以前、『志願者殺到の「人気大学」を選んでいいのか?』の原稿でも触れたが、昨今では大学入学後にミスマッチを起こし、中退する学生の増加が問題になっている。「とりあえず、有名な難関大学へ進学しろと周囲の大人に勧められたから」という学生が、進学してから興味の持てない授業や自分に合わない環境に悩むケースも多い。MARCHは受験対象となりやすい大学群という意味で、ミスマッチを招く懸念がある。
 都内の大規模な総合大学は、確かに全国的に知名度も高く、多くの卒業生を社会に輩出している。しかし、小規模でアットホームな環境の方が伸びる高校生だって多い。無理に周囲の大人の思惑に沿った受験をする理由はないのだ。

 大学進学を希望している高校生、およびその周りの大人に伝えたい。「まず、MARCHというくくりを忘れなさい」と。その上で、各大学の特徴、学習環境、自分との相性を見極めるため、比較・検討していただきたい。

⇒MARCHはあの頃とまったく違う

 MARCHの5大学は、いずれも熱心に大学改革を進めてきた。分かりやすい例の一つが、学部・学科の再編だろう。表は、1998年以降に新設された学部を色分けしている。

明治大学・青山学院大学の学部
立教大学・中央大学の学部
法政大学の学部

 再編のペースに違いはあるものの、99年以降に学部数を15へ増やした法政を筆頭に、5大学はこの20年で学部・学科の多様化を少しずつ進めてきた。
 「自分たちのときにこんな学部なかった」
 「いったい何を勉強する学部なのか分からない」
 こう感じる卒業生も多いだろう。新設学部の中には、教育関係者でない限り、名称だけではその内容を正確に想像しにくい学部もあるかもしれない。

 新設された学部は、<1>文系・理系の分類が難しい文理横断的な学部が多い <2>女子学生を意識した学部が多い <3>留学や外国語教育をウリにした「国際・グローバル系」と言われる学部が目立つ――といった三つの傾向が読み取れる。

 こうした学部の増加・多様化は、MARCHに限らず、大学業界全体に見られる一種の「流行」でもあるが、多くの学生の受け皿であるこれら5大学の動向が、そうしたトレンドを促進させている部分もあるだろう。多くのビジネスパーソンを経済界に送り出してきただけあって、各大学とも社会からの要請を反映させているように思われる。

⇒注目集める立教・経営学部

 新設学部には、「キャリアデザイン学部」(法政)のように新しい学問分野の開拓に挑戦する学部や、「社会情報学部」(青山学院)のように文系・理系の垣根を越えたカリキュラムを用意するなど、歴史のある既存学部とはまた違う、思い切ったコンセプトを掲げている学部が少なくない。
 グローバル教育を看板にする学部では、専門教育も含めた授業の大部分を英語で行い、留学を必須にするといった最近の時勢に合わせた取り組みが広がっているようだ。

 この中で、最近特に注目を集めているのが立教の経営学部だ。2006年に設立された新顔だが、リーダーシップ教育やグローバル人材の育成など、これまでの経営学部にはない特色を打ち出している。
 少人数教育の徹底、授業を担当する教員同士の密なコミュニケーション、企業などと連携しての実践的な授業などに力を注ぐ。企業からの評価も高く、就職実績も高い。河合塾などが発表する入学難易度(いわゆる「偏差値」)でも早慶と並ぶ地位を得つつある。

⇒新設学部が大学改革を後押し

 立教は現在、大学全体でリーダーシップ教育を特長として掲げている。その柱の一つである「グローバル・リーダーシップ・プログラム(GLP)」は、経営学部がウリにしていたプログラムを全学に展開する形で生まれたものだ。

 ほかの大学でも、たとえば国際系学部の新設が、他学部での海外留学やグローバル教育にもプラスの影響を与えるようなケースは散見される。大学組織にとって、全学部の教育内容を一斉に変えるような、大規模な改革を展開するのは容易ではない。
 MARCHの各大学のように、歴史があり、規模の大きな組織ではなおのことだろう。新しい学部での実験的な取り組みを、大学全体に広げていくというアプローチは、大学改革の建設的な方法なのかもしれない。
 前述した<1>~<3>に加え、最近の新設学部には、<4>実践的な教育プログラム <5>少人数でのゼミなどに参加できる環境整備――など教育環境や授業スタイルにおいても注目すべき点がある。
 多くの学生を抱えるMARCHのような各大学は、大人数が受講する「マスプロ教育」という批判もしばしば寄せられてきた。ゼロから構想する新設学部の方が、より大胆な体制を取りやすいのは事実だろう。こうした取り組みも、大学全体に広がってほしい。

⇒注目すべきは既存学部にも

中央大学

 ここまで新設学部について述べたが、誤解のないように言っておきたい。学部を再編していないからといって、大学改革が進んでいないわけではない。

 たとえば中央は、この20年間、新たな学部を設置していない。他大学がこぞって新設した「国際(グローバル)○○学部」も中央にはない。しかし、日本人学生の留学者数は国内の大学で10位にランクし、MARCHの5大学では明治に次ぐ2番目の実績を上げている(日本学生支援機構「日本人学生派遣数の多い大学」より)。
 このランキングの上位は、外国語学部や国際系学部のある大学がほとんどなので、中央大学の堅実な取り組みは興味深い。

 新学部という「出島」に頼らずに、既存学部の教育・環境を国際化していくことの方が、大学においてはより困難な挑戦だ。これは経営方針の違いというべきだろう。受験先を検討する場合は、目立たないけれど、堅実な教育の環境整備にも着目してほしい。

⇒「教育力」は違うのに…

 「グローバル教育に力を入れるため英語だけで授業を行う国際○○学部を新設」

 「文・理にとらわれない教育で現代の課題を解決する日本初の○○学部!」

 残念ながら、多くの高校生や保護者、高校教員が、各大学の違いや学部の狙いを十分に理解しているとは思えない。だから、知名度のある明治、青山学院、立教、中央、法政ですら、このように新しい名前の学部や派手なキャッチフレーズに頼らなければ、教育力の違いに注目してもらえない。
 中央の留学生数のように、地味で着実な教育改革を進めるよりも、「全員が留学する学部を作りました」というPRばかりに目がいく傾向にあるのが実情だ。
 「文・理にとらわれない教育」といった言い方もそうだ。伝統のある法学部や経済学部の学生に対して、数理教育や情報技術の指導を強化するアプローチだってあるだろう。MARCHのように、毎年、膨大な人数の卒業生をビジネスの現場へ送り出す大学については、「数学やデータサイエンスに強い経済学部」「グローバル化した法学部」などを求める社会のニーズもあるはずだ。

 既存学部も含め、個々の学科単位でこうした挑戦をしている教員もいるかもしれないが、高校教員らに意見を聞く限り、そうした取り組みは伝わっていない。高校が望む「MARCH」という看板に大学側も依存している面もあるのだろう。
 立教の経営学部のように、社会からの、特に高校生からの評価を「変えた」例は、残念ながら多いとは言えない。

⇒授業を見せられない?

 とはいえ、立教・経営学部が、設立当初から現在のように評価が高かったわけではない。もちろん、新設学部の教育コンセプトや実際の授業の様子は注目に値したが、それらは立教全体の広報活動の中で完全に埋もれているように見えた。
 立教の他学部と同じように扱われ、高校側からも、「MARCHに新しい経営学部が一つ増えた」という見られ方をしていた。

 こうした見方を変えていったのは、学部の教職員と学生たちである。経営学部は毎年、多くの高校生を普段の授業に招待している。最近では200人規模で高校生が学部1年生と一緒に学ぶ日なども設けている。高校教員たちにも、積極的に教育の実態を公開しているようだ。こうした地道なPR活動は、高校側からの見方を変えた。

 メディア向けのリリースなども、学部から直接送られてくるものがあり、「MARCHの枠に埋もれてはならない」という意思を感じる。ここまで努力している学部組織を、5大学の中でほかに知らない。

 大学関係者に立教・経営の取り組みを話したところ、「ウチの先生が授業公開など許すはずがない」といった反応が多かった。驚くことに、「実際の授業を見せたら受験生が減る」という声すらあった。

⇒没MARCHから脱MARCHへ

 立教・経営学部だけが「脱・MARCH」を実現しつつある背景には、関係者の熱意や、自分たちの教育に対する自信、社会に向き合う姿勢の違いなどもあるのではないだろうか。

 「入試難易度が近くても、この5大学の特色はそれぞれ違うはずだ。MARCHをひとくくりにせず、自分に合った大学を探させたい」

 こんな意識を持つ保護者や高校の進路指導担当教員も、実を言えば少なくはないはずだ。ただ、こうした保護者や高校側の要望に、各大学はまだ十分に応えられていないように思う。教育内容が個性的で素晴らしいはずなのに、それを伝えきれず、結局「MARCH」の中に埋没してしまっている学部もあるだろう。

 MARCHというブランドに甘んじることなく、5大学はそれぞれの実力をもっと発信してほしい。
 そして、受験先を検討している高校生は、「とりあえずMARCH」という理由だけで受験することがないように伝えたい。

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